11月27日~29日
長野市・ビックハット
男子は羽生結弦が圧巻の演技を見せた。初日のショートプログラムではジャンプの着氷にやや乱れはあったが、他の要素をクリーンにまとめて自身の持つショート歴代最高記録を更新する106.33点で、2位に10点以上の差をつけトップに立つと、翌日のフリーではさらに波に乗った。平安時代の陰陽師、安倍晴明をテーマにした「SEIMEI」の楽曲に乗り、冒頭の4回転サルコウ、4回転トウループと鮮やかに着氷し、観客を一気に自分の世界に引き込むと、後半には4回転3回転のコンビネーションジャンプ、トリプルアクセルからのコンビネーションジャンプ2本など全てのジャンプを加点のつく着氷で見せ、会場からはジャンプが決まるたびに悲鳴にも近い歓声が沸き起った。
優勝した羽生結弦のフリー演技
クライマックスのコレオ・シークェンスの前には場内のボルテージは最高潮に達し、地鳴りのような手拍子が会場を揺らす中、羽生は最後までスピードを落とさずに「ゴール」へと滑り切った。和笛と共に笑顔でフィニッシュすると、空へ向けてこぶしを高く振り上げた。
「緊張はしましたが、絶対王者だと自分に言い聞かせて滑りました」と胸の内を明かし、勝利への強い意志と類まれな集中力の高さを見せつけた。200点をはるかに超えるフリー得点216.07点が表示されると、羽生は両手で顔を覆った。
「正直、興奮していてなんて言ったらいいかわかりません。皆さんの歓声、視線、心の声、世界中から力をもらっている感覚がありました」とその喜びを隠さなかった。史上初の総合300点越える322.40点で「絶対王者」としての存在を証明した。
~ ユーラシアスポーツ8号より抜粋 ~
Text: Satoko YAMANARI
Photo: Miwa MORI