イオンカップ 世界新体操クラブ選手権大会 2004
2004.10.8~10 東京・東京体育館
アテネオリンピックから一ヵ月半、今年で11回目を迎えるイオンカップに、オリンピック金・銀・銅メダリストが勢ぞろいして、華麗で熱い戦いが繰り広げられた。
現在の新体操界は、ロシアを筆頭にウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンなど旧ソ連諸国の独壇場と言って過言ではない。アテネオリンピックでは上位10名中7名が旧ソ連諸国の選手が占め、その突出した実力を見せつけていた。イオンカップへはその7名全員が来日し、まさにオリンピックの再演となった。
大会2日目こそ台風により観客もまばらだったが、華麗な演技に観客からは大きな声援・拍手が送られた。人気を博したのはアテネ金メダリストのカバエバ(ロシア)と銅メダリストのベッソノワ(ウクライナ)。
カバエバといえば驚異的な柔軟性、そしてそれを生かした柔らかい弾むような演技が持ち味で、対するベッソノワは恵まれた長い手足を生かし、優雅かつ雄大な演技を特徴に、そのルックスからも日本では大変人気がある。また、スピード感が持ち味のゴデュンコ(ウクライナ)や、独特なしなやかさのユスポワ(カザフスタン)、そしてアテネオリンピック銀メダリストのチャシナ(ロシア)なども注目を集めた。
アリーナ・カバエバ (RUS)
大会を通じてもっともメディアから注目を集めたのは、長年にわたり世界選手権、ヨーロッパ選手権などで数々のタイトルを手中にしてきたカバエバの去就。常にスター選手として第一線を走り続け、期待されながら取れなかったシドニーでの金メダル。ようやくアテネにおいて4年越しの念願の金メダルを手に入れたのだから、記者たちの質問もそれに集中するのも当然のこと。
インタビューに答えるカバエバ
「スポーツにおける目標はもうない。アテネ後、休養しようかとも思ったけれど日本のファンの前で演技したいと思い、来日を決めた。私の世界デビューは日本のこの大会(96年イオンカップ)。だからこの大会で競技を終えるのは私らしく、嬉しく思う」
カバエバはそう話し、このイオンカップで正式に引退を表明した。
「日本は大好き。ファンの中に子供が多いのはとても嬉しい。私たちはああいった子供たちのために演技をしている。将来はモスクワに小さい子供たちのためのスクールを作りたい」
全てをなしえて競技生活を退くカバエバには、女王にふさわしい自信に満ちた笑顔がこぼれていた。カバエバにとって、世界デビューは日本、世界選手権初タイトルも日本の大阪大会、インタビュー中には何度も日本が大好きだと話した。
試合は有終の美を飾るべく、カバエバの優勝、ベッソノワは後半にミスが出て3位、チャシナは以前から痛めていた足の怪我により元気がなかったが無難にまとめ2位に入った。
ジュニア部門ではカナエバ(ロシア)が前評判通りの実力を見せて優勝し、北京に向けて次期女王の期待を集めた。引退を表明したカバエバもイオンカップがデビュー戦だったことを考えると、カナエバの今後が大変楽しみだと言える。
大会終了後、カバエバとベッソノワによるエキジビション演技も披露され、会場からは惜しみない拍手と声援が送られた。カバエバの演技をもう見ることができないのは寂しい気もするが、そこには晴れ晴れとした笑顔があった。将来、カバエバの育てたジュニア選手が日本にやってくるのを楽しみにしたい。
<Text/Photo Miwa MORI>